キウイフルーツ果汁のプロテアーゼ活性
(パインアップルやパパイアとの比較)


 人工基質を用いて、それぞれのフルーツの果汁についてプロテアーゼ活性を測定した。 測定は、各プロテアーゼの最適pHに近い、pH 6.0で行った。

 キウイフルーツ果汁やパインアップル果汁は、高いプロテアーゼ活性を示す。パパイアはパパインを含むことで有名だが、フルーツとして市販されているパパイア(熟したパパイア)は、パパインを痕跡程度にしか含んでいない。 したがって、この実験結果のように、パパイア果汁はキウイフルーツの15分の1以下、パインアップルの20分の1程度のプロテアーゼ活性を示すにすぎない。


 
 

パパイアとパパインに関する誤解


 よく、一般家庭向けの料理の本などに、「パパイアはパパインを豊富に含むため、肉料理のデザートに適する」とか、「パパイア果肉や果汁で硬い肉を処理すると、肉が軟らかくなる」と書いてあるのを見かけるが、これは大変疑わしい。(と言うより、まずそんなことは絶対に起こらないであろう。) また、「生のパパイア果肉や果汁を加えると、ゼラチンゼリーは固まらなくなる」と書いてある本も多い。
 しかし、共同研究者の学生と私が行った実験の結果によれば、筋原線維タンパク質をパパイア果汁で処理しても、ほとんど分解は起こらなかった。 また、食肉をパパイア果汁で処理しても、その食肉表面の組織に生じる変化は、きわめて軽微であった。 さらに、生のパパイア果肉を加えても、ゼラチンゼリーはしっかりとゲル化した。(さすがにピューレーとして50%も加えた場合には、少しゼリー強度は低下した。)

 恐らくこのような誤解は、パパイアの未熟果と成熟果とを混同することによって生じたものと考えられる。 下に示すパパイアの未熟果は、沖縄などで野菜として販売されているものである。 この果皮に傷をつけると、白色乳液が流出するが、この中にはパパインが豊富に含まれている。

 上記のような、「パパイア果実がパパインを豊富に含む」という誤解は、かなり蔓延している。 先に挙げた料理の本はもちろんのこと、インターネット上にも、同様の記載をしたホームページが多々見受けられる。 さらには、食品学や調理学の教科書でさえも、間違った記載や誤解を招く表現がなされている場合が散見される。 フルーツパパイア(成熟果)にはパパインがごくわずかしか含まれていないことを、ぜひ認識してもらいたいものである。 




パパイア未熟果(青パパイア)
果皮に傷をつけたところ
断面