精製アクチニジンによる筋原線維タンパク質分解作用のpH依存性


 牛筋原線維タンパク質(5 mg/ml)を精製アクチニジン(1.5 mg/ml)によって、25℃、30分間処理した。 処理時のpHは、クエン酸-リン酸緩衝液によって、pH 2〜8に調整した。

 アクチニジンは、pH 3〜4.5の条件では、筋原線維タンパク質を非選択的かつ非限定的に加水分解したが、pH 5.5前後では、ミオシン重鎖を選択的かつ限定的に加水分解することが示された。 すなわち、アクチニジン処理時のpHを制御することによって、ミオシン重鎖を選択的かつ限定的に加水分解することが可能であることが示された。 この結果は、アクチニジンを食肉軟化剤としてpH 5.5前後の条件下で使用した場合、特殊な反応停止剤を用いたり、また反応時間の厳密な制御を行うことなく、筋原線維タンパク質を適度に加水分解できる可能性を示している。 そのため、過度の加水分解による食肉組織の破壊や,それに伴うテクスチャーや栄養の損失を抑えることができるものと期待される。 この点において,アクチニジンは従来用いられてきたパパインやブロメラインよりも優れている可能性が示唆された。 またこのpH 5.5という値は,食肉自体のpHが5.5前後であることを考慮すれば、無理なく実用可能な範囲であると考えられる。 なお、豚肉および鶏肉由来の筋原線維タンパク質でも、同様の結果が得られた。

 ただし、「実際に食肉がどの程度軟らかくなるのか」という問題や、「パパインとどの程度効果が異なるのか」という問題については、いまだ検討を行っていないため、今後の課題である。