「キウイフルーツにソラレン(フロクマリン)が含まれる」という完全なデマが広まった原因



多くのサイトで「キウイフルーツ(キウイ)には光毒性をもつソラレンが含まれる」とか、「キウイフルーツ(キウイ)にはソラレンがたくさん含まれるので、朝食べてはダメ」あるいは「キウイフルーツ(キウイ)を食べてから日光を浴びると、日焼けやシミがひどくなる」というデマが、もっともらしく書かれています。こんな根も葉もない間違った情報は、どうして広まってしまったのでしょうか。ようやく全容が解明できました。約半年かけて解き明かした原因と経緯は、以下のとおりです。
〈 2011年11月11日 〉
三空出版より「白ツヤたまご肌のつくりかた」(深澤亜希 著)が出版された。
その59ページに「キウイにはソラレンが含まれており、これによりシミができやすくなるといわれている」との記載があった。
これが「キウイフルーツにソラレンが含まれる」という、最も古い記述である。
出版元の三空出版からは、メールにて「情報の信ぴょう性が確認できないため、該当部分をすべて削除した。現在ホームページでお詫びと訂正を掲出している」とのご回答をいただきました。
この書籍の記載が、インターネット上のいくつかのサイトで紹介された。  
〈 2015年7月27日 〉
TBSの「世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?」で、「キウイはソラレンを多く含むフルーツ」として紹介された。
TBSからは電話にて、「番組を監修した3名の専門家からは、キウイフルーツにソラレンが含まれるという話はなかった。何の根拠に基づいて紹介したのか、根拠が示せない」とのご回答をいただきました。TBSに内容証明郵便を送ることによって、「事実無根の誤情報を放送した」ことをお認めいただいております。
「美肌・美白のために良いと思って朝、食べていたキウイフルーツが、実は日焼けやシミの原因だった」というストーリーは、大変センセーショナルであったため、インターネット上の多くのサイトにこの誤情報が拡散した。
〈 2017年5月11日 〉
日本テレビの「ヒルナンデス!」において、「キウイはソラレンを含むので、朝食べるのは注意が必要」という内容の紹介があった。
日本テレビからはメールにて、「ご指摘の点について調べ直したところ、不確かな情報を伝えていた。ホームページの情報は削除した。今後気をつける」とのご回答をいただきました。
〈 2019年3月14日 〉
テレビ朝日の「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」において、「キウイにソラレンが含まれる」という内容の紹介があった。
テレビ朝日からはメールにて「番組制作に関わった5名の専門家からは、だれからも各々の果物や野菜にソラレンが含まれるか否かの根拠をもらっていなかった。美容関連や健康関連のインターネット記事を参照しただけだった。以後気をつける」とのご回答をいただきました。
その他多くのテレビ番組で、同様の内容が放送され、この誤情報は半ば既成事実化してしまった。  
   
〈 2020年8月 〉
キウイフルーツに含まれるソラレンおよびソラレン関連物質(5-メトキシソラレン、8-メトキシソラレン、アンゲリシン)を高速液体クロマトグラフィーによって測定した結果、いずれの物質も全く検出されなかった。緑肉種も黄肉種も、皮をむいても皮ごとでも、いずれの場合もキウイフルーツからソラレンとその関連物質は、全く検出されなかった。
分析法の検出感度から計算すると、キウイフルーツに含まれるソラレン類(フロクマリン)は、可食部100グラム当り0.00000236グラム未満であり、一度に体重の7倍に当たる4,200個のキウイフルーツを食べても、肌に影響が出る0.01グラム(10ミリグラム)のソラレンを摂取することはできない計算となった。実質的には、「キウイフルーツにソラレンは含まれない」と言える。
また、文献を調査すると、「イチジク果実」や「オレンジ果肉」にもほとんどソラレン類は含まれていない。したがって、これらを食べてから日を浴びると日焼けが増すというのも、完全なデマである。レモンも、果肉に含まれるソラレン類の量は少ないため、30キログラム程度を食べないと、ソラレン0.01グラム(10ミリグラム)摂取には至らない。