キウイフルーツに関する
「よくある誤解」
× サルナシ(こくわ、ベビーキウイ)はキウイフルーツの原種である。 |
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まちがいです。サルナシ(こくわ、ベビーキウイ)はキウイフルーツと同じマタタビ属の植物ですから、類縁の植物であることは事実です。ただし、サルナシが品種改良されてキウイフルーツができたわけではありません。したがって、「サルナシはキウイフルーツの原種」というのは、完全な誤りです。 | |
× アクチニジンはキウイフルーツの皮の近くに多く存在する。 | |
まちがいです。アクチニジンは果肉の緑色の部分に、ほぼ均一に分布しています。皮の直下に特に多いという事実はありません。中央の白い部分(果心)にはアクチニジンが少ないことは確認されています。詳しくはココやココを参照してください。 | |
× サルナシにはレモンの10倍のビタミンCが含まれている。 | |
Web上によく見られるまちがいです。サルナシ果実のビタミンCの量は、果肉単位重量あたりで比較して、レモンの10分の1から最大でも2倍程度にすぎません。また、もしも果実1個あたりで比較するとなると、サルナシのビタミンCはレモンの100分の1〜20分の1程度に過ぎないという計算になります。詳しくはこちらで。 | |
× キウイフルーツにはタンパク質分解酵素である「アクチジニン」が含まれている。 | |
Web上によく見られるまちがいです。正しくは「アクチニジン」です。英語表記では「Actinidin」ですので、アクチジニンは明らかな間違いです。アクチニジンという言葉がなじみにくいせいか、あるいは言いにくいせいか、よく間違って記載されています。 | |
△ キウイフルーツにはタンパク質分解酵素であるアクチニジンが豊富に含まれている。 | |
もしもキウイフルーツというのが、一般的に市販されている緑色果肉のヘイワード種(グリーンキウイ)のことだけを指すならば、正しい記述です。まったく問題はありません。この果実は、1個あたりアクチニジンを
250 mg
程度含んでいます。これは、酵素の含量としては相当多い部類に属しますので、「豊富に」と言って差し支えないと考えられます。 ただし、キウイフルーツにも種類がありますので、事情は少し複雑です。例えばゴールドキウイ(ゼスプリ・ゴールド、ホート16A種)やレインボーレッド、香粋などの品種は、アクチニジンをごくわずかしか含んでいません。従いまして、ゴールドキウイやレインボーレッドなどの紹介文として、「タンパク質分解酵素であるアクチニジンを豊富に含みます。」と書くのは、まちがいということになります。(実際にそう書いてあるネット販売のページが散見されます。) |
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× ゴールドキウイ(ゼスプリ・ゴールド)には、普通のグリーンのキウイフルーツよりもベータカロテン(b-カロテン)が多く含まれている。 | |
まちがいです。直観的には果肉が黄色いゴールドの方が、ベータカロテンが豊富なように思われますが、実際にはグリーンとほぼ同等か、あるいはむしろ少なめです。普通のキウイフルーツでは、クロロフィルの緑色によって、ベータカロテン等の黄色(橙黄色)が覆い隠されています。これは、ベータカロテンを豊富に含む緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜やパセリなど)が、濃い緑色を呈しているのと同じ現象です。 なお、ベータカロテンと同じくカロテノイド系色素であるルテインも、ゴールドよりもグリーンのキウイフルーツに豊富に含まれています。 |
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△キウイフルーツの学名は Actinidia chinensis である。 | |
もしもキウイフルーツというのが、一般的に市販されている緑色果肉のヘイワード種を指すならば、まちがいです。確かに以前は Actinidia
chinensis に分類されていましたが、1984年に、緑色果肉で果実表面に毛(毛茸)があるものが Actinidia
deliciosa 、果実表面の毛が無いかあるいは軟らかくて疎らなもの(果肉色は主として黄色)が Actinidia
chinensis
として、2つに分けられました。 従いまして、普通のキウイフルーツ(ヘイワード種)は、Actinidia deliciosa です。ちなみに、黄色果肉のゼスプリ・ゴールド(ホート16A)は、Actinidia chinensis に分類されます。具体的にはこちらをご覧ください。 |
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△ キウイフルーツという名前は、果実がニュージーランドの国鳥であるキウイバードと似ていることから名づけられた。 | |
真偽のほどは疑わしいです。そういう話が一般に流布していますが、そのような事実の裏づけはないそうです。キウイフルーツ研究の第一人者であるニュージーランドの
Ferguson 博士の論文(New Zealand Journal of Crop and Horticultural Science,
2004, 32, 3-27)の第3ページには、次のように記載されています。「The name (kiwifruit) was chosen
because the kiwi is a symbol of New Zealand and not because of any
imagined similarity between the bird and the fruit.」 Ferguson 博士が学術論文に正式に記載しているので、これは信頼に足る情報だと思います。そうだとすると、キウイフルーツという名前を最初につけた人は、外観の類似とは無関係に命名をし、後に誰かがキウイフルーツ果実とキウイバードの外観が似ていることを指摘して、もっともらしい命名の理由を作り上げたのかもしれません。ところが、その理由があまりにも説得力のあるものだったため、一般に信じられて広まり、現在に至ったというところでしょうか。 |
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